春アニメが始まってちょっと経ちましたが、冬アニメ最後の感想を(笑)。
今回の冬アニメでは個人的に3つお気に入り。
「Gのレコンギスタ」「ユリ熊嵐」は前にも書きましたが、
この二つはどっちかというと例外的というか今の主流とはハズレてるというか、
そういうのと関係なくおもしろかったですけども、
「アニデレ」ことアイドルマスターシンデレラガールズは時流の中でおもしろかったね!
もともとアイマスびいきのところがあると自覚してはいるけど、
それ抜きにしてもおもしろかったと言い切れるよ、絶対。


ネタバレ入る上に長いです(照)。


まずなにより作りがていねいだった。
作画的にもものすごく細部にこだわっていて、
それだけでも観ていて感心したんだけど、シナリオが絶妙だったのがなによりすごい。


最近の1クールアニメは3話までで視聴者をつかまないといけないらしく、
アニデレもそうだったんだけど、この3話にまず圧倒された。
アイドルになりたての主人公格3人が、
トップアイドルたちのイベントのバックダンサーに抜擢された演出が見事。


ダンスの練習を懸命にこなし、なんとか形になったところで本番の日。
それでもステージ経験なんてまったくない三人だけに、
リハーサルでの他のアイドルの慣れた様子や、
スタッフたちのキビキビした緊張感のあるプロらしい仕事ぶりに押され、
あまりにも場違いなところに放り込まれた不安感がこっちにまで伝わってきた。
なにしろ三人とも普通の高校生に毛が生えた程度どころか、
これから生えようかというような状態だ。
文化祭で舞台に立つレベルで緊張しまくりだろうに、
それがプロのステージなんだから緊張状態もハンパじゃない。
未央なんて脳が飽和状態になって会話すらままならなくなり、
観てるこっちも彼女の心情が手に取るように感じられ、
不安感がたまりませんでした(苦笑い)。


ここで未央と凛のキャラクターを際立たせたのもすごかった。
普段は元気で明るくみんなを引っ張っていくタイプの未央が、
こういう土壇場ではいっぱいいっぱいになってしまうメンタルの持ち主で、
普段あまり前に出るタイプではない凛が他の二人を励まして引っ張っていく。


これで未央はメンタル弱いとする見方もあるけど、
個人的には「メンタルの種類の違い」と考えています。
たとえば順風で思い切り帆を広げてグングン加速して距離を稼ぐのと、
逆風の中、帆の角度を変えてジグザグながらしっかり前に進んでいくのと、その違い。
逆境に強い方がメンタル強いとされることが多く、
それは一面の真理ではあるけど、
たとえば凛みたいなタイプは順風でも帆は広げず、さほど距離は稼げない。
これは目立たないけど実は相当マイナスなんですよね。
順境でそれを最大限活用するというのも、立派な才能と実力です。
だからちゃんみおは順境におけるリーダー、凛は逆境におけるリーダーで、
実はニュージェネレーションズのバランスは抜群という見方もできると思っています(笑)。


で、ここまでの演出だけでもすごかったのに、ここからがさらにすごかった。
出番が来て、舞台裏にやってきて、
先輩アイドルの励ましやアドバイスを受け、
徐々に開き直っていく過程。
そしてステージに上がった瞬間、
それまでのプレッシャーから一気に解放され、「ステージの喜び」を享受する三人。
それを観てるこっちにも存分に感じさせる演出が、感動的ですらありましたわ。


普通のアニメだとここでは失敗してしまい、
それを糧に次回がんばって成功させるとか、
あるいは天才をモチーフにした作品なら、
失敗を逆手に取って大成功させるという演出になるだろうけど、
それを越えてみせた、少なくとも一味違うものを表現しきってくれたのがたまりませんでした。


そしてさらに圧巻だったのが、この「成功」すら6話の伏線だったというね。
さほどアイドル界の知識もなくアイドルになってしまった未央が、
最初に出演したトップアイドルのステージを基準に考えていたため、
自分たちのデビューイベントでの人の少なさに愕然。
これが普通だしここからがんばっていくんだというのを、
プロデューサーや他のアイドルはわかってるだけに
(凛もわかってなかったっぽいけど気にはしてなかった)、
このイベントも「成功」だったんだけど、
プロデューサーの言葉が足りなかったのもあって、
見た目以上に繊細な未央が激昂して一気に状況が暗転ときたもんだ。


これの展開はまったく予想外、想定外。
視界の外から奇襲を受けたような感覚で、
スタッフにあまりに心地よく掌で転がされてしまいましたわ(笑)。
というか、こうやって転がしてもらうのが視聴者の快感でもあるからね、
たまらなかった(笑)。
そして視聴者の方が未央よりアイドル界の知識があるから(笑)、
あれが「成功」というのもわかるし、
でもちゃんみおの気持ちもわかるしで、
相当本気でハラハラしてしまったよ。


ここでの島村さんの「天使」っぷりもすごかった。
ここまで未央と凛のキャラの強さに目立たなかったけど、
あの自然なブレなさかげんに、
プロデューサーだけでなく視聴者がどれだけ癒されて勇気をもらえたか。
島村さんが無自覚ながら「アイドル」がどういう存在なのかをしっかり理解しているのが感じられて、
さすがお姉さんというか、誰がニュージェネレーションズの「核」なのかもはっきり伝わった。
引っ張っていく未央と、押してゆく凛と、核・基盤となる卯月とね。
バランスや構成が完璧じゃないですか、ニュージェネは(笑)。
もともとキャラ設定がしっかりしているとしても、
アニメスタッフのその活かしっぷりも見事すぎましたわ。


そして島村さんに勇気づけられたプロデューサーの決心が、
時間が経って自分のいたらなさをじわじわと自覚していたちゃんみおをもう一度引っ張り上げ、
ブレてしまった凛も引き上げて、また最初からしっかりやっていこうという。


で、ここまでが前半6話で、後半は一話ずつ他のアイドルたちにスポットを当ててゆく。
この全体の構成も見事でした。


さらに視聴者にとって思いもかけないアイドル同士でユニットを組ませるのも
予想外でおもしろかった。
他のユニットも相当予想外だったけど、
中でも杏ときらりは鉄板だとみんな思ってたのにそれをはずし、
おそらく誰もまったく考えていなかっただろう、みくにゃんとだりーなを組ませる意外性。
しかもそれぞれのユニットで、
しっかりアイドルたちの新しい特長や魅力を引き出してる演出がすごかったねえ。
特にユニット名「*(アスタリスク)」の前川さんとだりーは、
鉄板だっただりなつに匹敵するくらいの印象になってる、自分の中では。
すでに視聴者の中では「解散芸」も確立されているしな(笑)。


それと声がついていなかったアイドルたちに、
ちょいちょい声がついて出演するのもすごいサプライズだったね。
それぞれのアイドルのプロデューサーたちは画面の前で悶絶していただろう(笑)。
ただ個人的には
「それならアニメ放送直前にやってたボイス争奪戦はいったい…」
という気分にはなってるんだが(苦笑い)。
橘さんアニメにも出てこなかったし、
彼女のプロデューサーたちは複雑かもしれないと(苦笑い)。


最初にも書きましたが、作りが丁寧というのも随所に感じました。
346プロのフロアの雰囲気とか、
「自分の会社があんな感じ!」と感じた視聴者も多かったんじゃないかな。
他にもアイドルの服とか、乱れた髪とか、本当に細かいところまで。
ライブで凛と卯月の髪が汗で貼り付いてるところとか、
熱出して寝込んだ島村さんの髪が寝癖でもじゃむーになってるところとか(笑)、
ああいうところがしっかりしてるとホントに作品が締まって深くなるんだよなあ。


あとシナリオで個人的に「うめえ…!」と感じたのは、
原宿で凸レーションと美嘉とプロデューサーが行き違いになるシーンです。
ああいうのってたいていご都合主義で強引になったりわざとらしくなったりするのに、
そういう感覚がまったくなかった。
シナリオは全話通してマクロもミクロも本当に隙がなく、
観ててコンプレックスすら感じてしまいましたわ(苦笑い)。


そしてこのアニメ最大のサプライズ&最大の収穫(笑)。
外の人・プロデューサー&中の人・武内駿輔くんですわ~。
これは抜擢したスタッフすら予想外・予想以上の大人気だったんじゃないかなあ。
アイドルより武内Pを目当てで観てた、
少なくともアイドルと同程度に武内Pを目的に観てた人がほとんどだったんじゃなかろうか。
自分もそうですし(笑)。
武内Pの出番が少ない時なんて不満だったしなあ(笑)。


武内Pについては前に日記に書いたから今回はスルーだが、
http://suntu500.blog.jp/archives/1017356350.html
http://suntu500.blog.jp/archives/1020764687.html
武内くんのインパクトは本当にすごかった。
どんな分野でも、素人が見てすらモノが違うとわかる才能や素質があるけど、
武内くんはその域にいる人だろう、きっと。
ちょっと前、同じ声優界でいえば沢城みゆきちを初めて観たとき、
似たようなものを感じた人は多かったんじゃないかな。
サッカーファン限定のわかりやすい例を挙げるなら、ガンバの宇佐美みたいなもん(笑)。
そのくらいすごいんですよ、本当に。


軽く余談っぽくなるけど、
最近の1クールアニメは途中で総集編や出演者・スタッフのトーク回があったりすることが多い。
これはいろいろ言われることもあるけど、
個人的には作品のクオリティを保つには仕方ないだろうという気分があります。
まったく鬼の首を取ったように「作画が作画が」と文句を言うくせに。
そんなだったら少なくともカネを出せカネをと。


それはともかく(苦笑い)、
アニデレも出演者のトーク回がありましたけども、
これすらうまく使っていたのがお見事(笑)。
ニュージェネの声優さん三人もですが、
やはりなにより武内くんを出演させるのがね(笑)。
そのくらいみんな武内くんが好きで、
だから周りも大事に育てて、本人も自覚をもって育ってほしいと感じます。
身勝手だけど観てる方は、これからが本当に楽しみでならないから。


アニデレは女性スタッフが中心だったみたいだ。
ぼくがそう感じるだけかもしれないけど、
こういう男性向けアニメを女性が作ると、
本当に傑作が生まれることが多い気がする。
10年くらい前になるけど「D.C. ~ダ・カーポ~」のアニメも本当に出来がよかった。


やっぱり男性スタッフだと、どうしても女性を理想化したり、
男にとって都合のいい性格や振る舞いをさせたりしてしまいがちで、
それが男の視聴者にとってはいいかもなんだけど(笑)、
でもやはりリアリティのある繊細さは女性スタッフにしか出せない気がする。
そのあたりが男が作る女性キャラでは突けない「ツボ」を突いてくるんですよね。


あんまり女性らしさを出し過ぎると、
ややドロドロして個人的には観にくくなるんだけど(苦笑い)、
そのあたりを絶妙な匙かげんでコントロールしてくれた作品は本当にお気に入りになる。
アニデレも間違いなくそういう作品でした。


また男性女性関係なく、スタッフの力量自体が本当にすごかった。
全体的にも、微細的にも、作品を完全に自分たちのコントロール下に置いて、
1話ごとだけでなく13話を「一つの作品」として描き切ってしまった。
この総合力はちょっと感動的ですらありましたわ…


まだまだいくらでも語れますが(笑)、3ヶ月後、第二期。
すでに制作に入っているだろうけど、とても楽しみにしています!
お世辞抜き、ガチでね!
しかしちょっと不安なのが、まさか武内Pがいないってことないよね…?(汗)
もしそうだったら自分的にはテレビの前で「ノオオオオオオ!!」って崩れ落ちるだろうから(笑)。