こないだ終わった「鉄血のオルフェンズ」。
ぼくも久々に観た富野さん以外のガンダムだったけど、いろいろおもしろかったです。
作り手は実力派だなあと素直に感じ入っています。


最終回後の日記にも書きましたが、一番思い入れがあるのはマクギリス。
正確には「こいつの活かし方次第で俺好みのおもしろい話にできるな」
という感覚があるのかもしれない(笑)。
そのくらい深みがあって、広い範囲で使い甲斐のあるキャラだと思っています(笑)。


ネットでマクギリスの評価を見てみると、

①マッキー許すまじ
②わかるところはある

にだいたい分かれるかな。

①の「許すまじ」は暗躍してカルタやガエリオやアインを
実質的に謀殺してしまったところもあるが、
「アルミリアとどうのこうのできるとは」という嫉妬がらみもあるようで(笑)。

個人的には②ではあるけど①であるのも正しいという辺りです。
「許せん」と思うことは正しいし、その感情はとても大切でもある。
だからマッキーが無様な形で途中退場するようなことになっても
(トドに殺されるとかありそうだなーと思うダグラム世代(苦笑い))、
それはそれで仕方ないと思うし、マッキー自身がその終わりも甘受しそうというのは感じます。


セブンスターズのうち、ファリド家は養父を追放したことで名実ともに当主となり、
ボードウィン家は跡継ぎを殺し、娘婿になることで実権を握る。
さらにセブンスターズ筆頭のイシュー家後継者を間接的に殺害して力を削ぐ。
他の七家族がどういう状況なのかわからないけど、
単純に考えればマッキーの勢力は実質的に七家族筆頭にもなりかねん。
もちろんこの「地殻変動」に他の五家族が黙ってるはずもないし、
ボードウィン家だってこのままファリド家に取り込まれるのをよしとはしないだろう。
マッキーの立場は視聴者が「許すまじ」と思ってるほど安泰ではないだろうと思います。


ただマッキーは今のところギャラルホルンの改革を目指してはいるけど、
最終的な目標は「世界の改編」だろうなとも思う。
それも自分が独裁者になって好き勝手やるためではなく
(その課程で必要とあれば独裁者にもなるだろうけど)、
より住みやすい世界を造ることが目的でしょう。
とすると、クーデリアと求めるところは同じなんですよね。


現在マクギリスにとってクーデリアは「使い道のある有用な駒」というあたりで、
クーデリアにとってのマクギリスは「フミタンの仇」というあたりだと思う。
でもクーデリアは意外と人格影響力が強く、
これまで会った有力者たち(駒として扱おうとしていた人たちも含めて)のたいていが
一目置く存在になってきている。

だけどクーデリアは「革命の乙女」として象徴やリーダーになれる素質はあるけど、
目標を達成するための手段を考えたり実行したりする
「参謀」がいないのが致命的なんですよね。
このままだとせっかくのカリスマ性も無駄にまき散らすだけで、
ほとんど実を結ばないで終わってしまう。
で、この参謀をマクギリスがやるのもいいんじゃないかなと。


マッキーは顔はよくて態度は紳士的だけど(笑)、
性格的に陰の部分が強く、またそのことを自分でわかってるし、
自分の手がすでに汚れていることも知っている。
こういう人は革命のリーダーには向かないです。
リーダーはとにかく明るく(脳天気ではなく「光」「太陽」に比喩されるような意味で)、
人に希望を与えるような存在でなければならない。
このあたりクーデリアはバッチリだ。

クーデリアも目的のためには
汚い手段を使わなければならない時もあると覚悟は決めているけど、
かといって絶対に越えてはいけないラインはきっちりキープしているんではないでしょうか。
具体的には謀殺や虐殺という手段は取らないし、取れない。
いや、謀殺までは死ぬほど苦悩してゴーサインを出すこともあるかもしれないが、
それでも多用は絶対にできないでしょう。

このあたりマッキーは違う。
すでに三人を謀殺し、一人を失脚させてる。
それも自分の身内や近しい人を。
必要とあれば部外者を殺すのに躊躇はないでしょう。


でもこのままいくとマッキーは行き詰まるような気がするんですよね。
マッキーが表舞台に立って改革者としてやっていこうとすると、
どうしても「演技」を続けなければならない。
マッキーならその演技をやり続けられるかもしれないけど、
クーデリアを前面に出して、マッキーは「頭」に徹すれば、
形としてもマッキーの気分としても、相当すっきりすると思うんですよね。


マッキーはどちらかといえば黒幕の方がやりやすそうだし、好きそうでもある(笑)。
黒幕というとクーデリアがマッキーの傀儡でしかなくなるイメージになるかもだけど、
そう単純でもない。
さっきも書いたようにクーデリアは人格的影響力が強く、また芯はブレない。
自分の目標や方針が甘いものだと自覚していても、そこは絶対に曲げない。
マッキーもクーデリアの「頭」をやろうと思ったら、たぶんそのあたりをわきまえて、
というよりそこの部分にこそ惚れて手伝うようになるんじゃないかな。

暗殺や謀殺、謀略を否としないマッキーは、
下手をするとそのままダークサイドに陥ってしまうかもしれないし、
マッキーの聡明さがあれば、自分がそうなる可能性があるともわかるだろう。
マッキー個人がダークサイドに落ちるだけならまだしもだけど、
世界の支配者クラスの人間がそうなってしまっては、
ギャラルホルンの腐敗どころじゃすまない迷惑を地球圏の人たちにかけてしまう。

だけどクーデリアという「灯台」があれば、
マッキーも迷うことなくそちらに進むことができるし、
その「明るい目標」を達成するために自分の頭を使うことができる。
汚れ仕事もやるだろうけど、それも最小限に抑えることもできるだろうし、
汚れ仕事がバレても「すべて自分の独断です」と
クーデリアに害を及ぼさない形で退場することもできるかもしれない。


それと実はマッキーがもともと持ってる権力や経済力も大きい。
クーデリアよりそれらのものはずっと大きなものを持ってるんですよね、マッキーって。
なにしろ世界七大家族というべきセブンスターズのファリド家の当主になり、
ボードウィン家の影響力も使うことができる。
クーデリアも火星ではお姫様クラスのお嬢様だけど、
セブンスターズから見たら「田舎貴族」「地方の金持ち」という程度の扱いだろうからなあ。


クーデリアとマクギリスが組むにしても、どういう経緯になるかという問題があるし、
特にクーデリアにとってはフミタンの仇、少なくとも死の一因という面があり、
そこは難しいところかもしれないけど、
「目的のためには手段は選ばない」の一つにもっていけるだろうし、
そもそもフミタンのように
「生い立ちから来る不本意な生き方と死に方」をする人を作り出さないための世直しだから、
そこを考えれば協調は可能でしょう。

あと必要なのは、マッキー以外の「ラスボス」かな(笑)。
そうすりゃ視聴者的にも納得だ(笑)。

ただあんまりマッキーとクーデリアの方ばかり中心に話を進めると、
ドラグナーみたいに主人公たちが空気になってしまって、
そこが新たな問題になってしまうな(苦笑い)。