ヒデこと中田英寿が現役を引退してもう10年か。
今の中学生くらいだと、もうヒデのことを知識で知ってはいても、
日本代表でのあの圧倒的な存在感を体感してはいないんだよなあ。
当たり前のこととはいえ、やはりさすがにちょっと驚くな、体験した世代としては(笑)。


カタールワールドユース、アトランタオリンピック、フランスワールドカップ、
シドニーオリンピック、日韓ワールドカップ、そしてドイツワールドカップ。
これだけの世界大会のほとんどすべてで絶対的な中心選手として君臨した選手ってのは、
今んとこヒデだけだよなあ。
しかもアジア予選だけでなく、すべて本大会まで進んでるとなればなおのこと。
もちろんヒデだけの力ではないけど、
ヒデの力がなければ絶対行けなかったと断言できるのは、
おそらく当時を知る日本人のほとんど全員じゃなかろうか。


おそらくヒデは突然変異種なんだろうな。
実質的にはまだJリーグ以前の選手なのに、
サッカーの才能だけでなくメンタルでもビジョンでも突出していたし、
ノウハウが蓄積され、様々な指導を受けている今の選手でさえ、
当時のヒデの水準に到達しているのが何人いるか。


個人的に最も「うわ、こいつ本物のバケモンだったんだな」と驚愕したのは
ローマ時代のユベントスとのアウェイ戦だったな。
最終節ひとつ前、首位を走るローマが、
勝ち点2差で追走するユベントスのホームに乗り込んだゲーム。
これでローマが負ければ逆転され自力優勝がなくなってしまうという試合なのに、
ローマは0-2でリードされたまま後半15分が過ぎる。
この状況でヒデが投入されたわけだけど、ここからが圧巻だった。

まずとんでもないミドルシュートを叩き込んで1点差。
さらに後半ロスタイムにもう一度同じようなミドルを打ち、
キーパーが弾いたところをモンテッラが押し込んで同点。
わずか30分で1ゴール・(実質)1アシストを決め、ユベントスの逆転優勝の希望を叩き潰し
(それも天王山で異様な雰囲気のユーベのホームで)、
ローマの優勝を実質的に確定させてしまった。

ローマには同じポジションにトッティという絶対君主(絶対王子?(笑))がいるだけに
出場機会には恵まれなかったけど、
あの30分だけでヒデはあの年の年俸分の仕事をしたと、ぼくは思っています(笑)。


本来だったらあと5年はトップフォームで、
その気になれば現役選手として10年はやってけただろうけど、
ヒデにはヒデにしか見えないビジョンがあるんだろう。
そのビジョンがあったからこそ、あのパフォーマンスだったというのもあるだろうし、
他人が、それも凡人であるぼくらがとやかく言うのは天才に対して失礼だし、
みっともないというものだろうな(苦笑い)。


とはいえ、なぜかいまだに現役復帰したら
当時のようなプレーを見せてくれるんじゃないかと思わせるものがあるのも、
ヒデの恐ろしいところだな(笑)。
その意味でも突出して異質な選手だよ、ほんと(笑)。