サクラと紅茶

日常のことを書いていきます。 物書き志望でもあります。 第2回富士見ラノベ文芸賞 一次選考通過

タグ:八雲さんは餌づけがしたい。



昨日発売の「八雲さんは餌づけがしたい。」、本日手に入れてゆっくり読みました。
いつもは各話ごとで感想書いてるけど、前巻くらいから終わりに向けての連作みたいになっているから、今回は一巻通してのそれを短めに。


ネタバレ入りますよ。






そう来たか―ー! というのが最後まで読んだ最初の感想です(笑)。
でも八雲さんの場合このくらいの終わり方がちょうどいいかもしれないな。
はっきりさせず、今後のことは読み手の想像に任せるような。
だからむしろ、想像の方がはかどってしまった(笑)。


最終回はさくらが今度中学二年生というからには、約3年後くらいか。
その前に大和がいきなり甲子園行ってたのが意表を突かれましたが(笑)。
行くとしても三年次だと思ってたから、まさか二年生のときに行くとはなあ。
ダイゴとコウタもベンチ入りしていたから大したもんだ。
おそらくダイゴは代打要員で、コウタは守備要員かな。
代打の一発屋とか燃えるんですけど(笑)。
最終回でプロにうんぬん言ってたからダイゴは大学でも野球はやってるみたいだな。コウタはわからんけど。


しかし大和、高卒ルーキーでいきなり打点王とかすごすぎるわ!(笑)
てゆうかそれなら新人王も確実でしょう。
最近は高卒でいきなりレギュラーどころか一軍の試合に出られることすら稀なのに、その上個人タイトルまで取っちゃってるとなると、大谷と同レベルで注目されちゃってるかもしれんな。
ダブル翔平とか言われて。


所属球団は当然のようにヤクルト(笑)。
しかしどうだったんだろう。
最初から即戦力として取ってきたのか、それとも囲っておいて育てようと思ったのか。
半々で取っておいて、二軍の試合に出したら予想以上に結果を出してきて、ちょうど一軍のショートがケガをして、思い切って起用したらあれよあれよと活躍してしまったとか、そういう感じなのかな。
そうなると二年目のジンクスが怖いが、もしこれをものともせず結果を出したら、それこそメジャーが放っておかんかもなあ。


ルイちゃんも大和が入ったのがヤクルトで本当によかったね(笑)。
仮にジャビットの方に入ってたらどれだけ葛藤したことか(笑)。
まああっちは高卒ルーキーがいきなり出られるような選手層じゃないだろうが…いやヤクルトだってそうなんだけど、実際は(苦笑い)。
でも今年も結果出しちゃったら、メジャーじゃなくこっちが手を伸ばしてきそうではあるが…


ルイちゃんはおそらく今年大学二年生か。
ちょっと落ち着いたかな…と思わせつつ、やはりそのままだった(笑)。
相変わらず大和がらみだと犯罪スレスレになるというか、暴走JKが暴走JDになっただけだったな(笑)。
去年も最初は戸田(ヤクルト二軍の本拠地)に通い詰めだったのが、途中から神宮へ入り浸りだろう、きっと(笑)。


しかし三年後…八雲さん32歳か。ドストライクじゃないですか、いろいろと!(笑)
最終回で一番驚いたというか意外だったのは、「さぁ…」って八雲さんも結構その気になっているところだったな。
もちろんそうなっててもおかしくはないんだけど。むしろ遅いくらいなんだけど(笑)。
個人的には二人は難しいかな、ルイちゃんルートかなとも思っていたんですが(過去ブログ参照http://suntu500.blog.jp/archives/1078080217.html)、大和がこうも早く結果を出して稼げる男になったのなら、そりゃまあもう障壁はほとんどないわな(笑)。
でもルイちゃんも好きなので可能性が残る終わり方なのもよかったです。


最後のメニューはギョーザだったか。
ギョーザに始まりギョーザに終わる。
いや第一話のメニューはギョーザではなかったですが、大和が初めて八雲さんの部屋でふるまわれたのがギョーザだったから。


さくらちゃんもすっかりこなれて。
中学は制服からすると私立に行ったのかな。
そして由梨をまたいで通るあたり、大和もずいぶんこなれて(笑)。
由梨さんは結婚も早いが離婚も早い可能性もあるなー(苦笑い)。


カバー裏、四人組は一巻の背表紙のオマージュなんだな。
大和はスワローズのユニフォーム姿。背番号が知りたい(笑)。


前にもちょいちょい書いてますが、ぼくはここ数年新しいマンガの開拓をあまりやってないんですよね。
その中では珍しい新規開拓だった八雲さん。
それこそ1巻の初版から全部買っちゃいましたから、しっかり五年のつきあいです。
これで読めなくなっちゃうのは残念で寂しいです。
けどもいいタイミングでいい着陸の仕方をしてくれたという安堵感もあり、寂しさはこれから消化していきたいと思っています。


里見U先生、五年間本当にありがとうございました。
カバー下のエッセイも毎巻楽しませてもらいました。
次回作はマリア先生の続きかな?
なんにせよ楽しみにさせてもらいます。

それと昨日のオンラインサイン会も見させてもらいました、楽しかったです(笑)。

あと「とらのあな」小冊子も11巻分コンプリートさせてもらいました、ありがとうございます!(笑)






というわけで感想後編!
(前編はこちら http://suntu500.blog.jp/archives/1078072743.html
当然10巻のネタバレ入るので注意です。



★第70膳 今日ケンカしたことも


前話で八雲さんにアパートを出てゆくことを告げた大和。
そのための準備も徐々に始める。


その一環というべきか、今日は妹のさくらが片付けの手伝いにきていた。
この日は大和は午後の練習がないため、一日で片付けを終わらせようとのこと。
大和としてはもともと荷物も少ないし、一人でやれると言うが、さくら曰く「お母さんに頼まれてるの」。


とはいえ大和としては、片付けつつも口やかましい妹に閉口し「お前どんどん母ちゃんに似てくなあ…」と深いため息をついてしまう。


黙々と片付けを続ける兄妹だが、さくらとしてはもう一つ、兄に確かめなければならない重要なことがあった。
「さみしくないの? 八雲さんのこと」
そんな妹の問いに、気のない風に生返事をする大和。
そんな兄の態度にムッとするさくらは言い募る。

「寮に入ったら外出れないんでしょ? もう会えないかもしれないよ」
「…そうかもしんねーけど、さみしいとかはチゲーだろ」

「…何それウソじゃん。バカみたい」
「…は?」
「そうやってウソばっか言って強がって。野球辞めるって言ったときと同じ顔してるじゃん」


ここまでくると兄妹とも売り言葉に買い言葉で自分でも止めようがなくなってくるけど、言い当てられた大和は押し黙り、仕事を続けることを強要して、それ以上妹に何も言わせない。


そして夜は兄妹そろって八雲さんの部屋にお邪魔して、夕飯をごちそうになる。

「今日はからあげカレーでーす! カレーもからあげもおかわりいっぱいあるからね!」

大和がいなくなることにいろいろ思うところはあるだろうけど、それはそれとして「餌づけ」は楽しいし、今夜はさくらも一緒なだけにうれしそうにはしゃぐ八雲さん。
だけど兄妹の方はケンカが続いている状態で、いささか雰囲気が悪く、それを察した八雲さんもちょっと気まずくなる。


それでも大和の食欲は変わらず、黙々と食べておかわりも(笑)。


そんな空気をを少しなごませようと、八雲さんはさくらに尋ねる。
「食べ終わったら今日はどうするの?」
「帰ります。駅まで父が迎えに来てくれるので」

それを聞いて「大和クンと駅まで送る」と笑顔の八雲さんだけど、大和は「今日は夜走るんで」とそっけなく、そんな兄に「お兄ちゃん全然頼りないし、いてもいなくても関係ありません!」と半泣きの表情で怒鳴るさくら。
そんな妹を置いて「ごちそうさま」と一礼した大和はそのまま出て行ってしまい、半泣きだったさくらは本当に泣き出して、八雲さんを驚かせる。


駅まで送る道すがら、「大和クンとケンカでもしたの?」とさくらに尋ねる八雲さん。
うなずくさくらは「だってお兄ちゃんバカなんだもん!」
そんなさくらをほほ笑ましく感じつつ、大和のフォローをする八雲さんだけど、さくらは「頑固だし意地っ張りだしカッコつけてばっかりだし」と悪口を連呼しながらも

「…いつも私に何も言わないし」

と本音が漏れ、八雲さんも小さく笑う。
そして経験者としてさくらに告げる。

「人との思い出って不思議で、大切な人のことを思い出すとき、楽しかったことや幸せだったことと同じくらい、ケンカしたことや傷つけちゃったことを思い出すの」
「でもね、嫌な気持ちにはならなくて全部ひっくるめていい思い出なのかなって。だから今日ケンカしたこともいつかきっと笑い話になるよ」


笑顔の八雲さんが諭すことに、どこか別の感情も突かれたさくらはボロボロと本当に号泣しはじめ、抱きしめて慰めてくれる八雲さんにずっと我慢していたことを告げる。

「お兄ちゃんが引っ越しても、八雲さん家また来ていいですか…?」

八雲さんの答えは当然「もちろん」。


そうして駅に着くと、ロードワーク途中らしい大和が待っている。
「やっぱりいいお兄ちゃんじゃない」
怒り顔に涙を浮かべて兄に向って走り出すさくら…で終わり。


――大和の気持ちをズバリ言い当てたさくらだけど、兄という接点がなくなったら八雲さんに会えなくなるかもしれないという不安から、本心は自分もさびしかった(お兄ちゃんが一緒に住んでいないという慢性的なさびしさも加わってか)。
八雲さんはさくらにとって、美人でやさしくて料理も得意で、母親と違う種類の理想の女性だろうし、すでに深く関わりすぎてしまってもいるから、会えなくなるとなるとショックも大きいだろうからな。



★第71膳 西原ルイの大切なコト


愛の告白のように「砂糖控えめ手作りプロテインチョコバー」を潤んだ目で渡すルイと、それをさらっと流しながら受け取る大和と、いつも通りの二人。
だけどいつもと違ったのは、礼代わりに「今度の休みにデートくらいしてよね」というルイに大和がさらっと「いいよ」と応じたこと。
自分で誘っておいてその答えにガチで驚くルイ(笑)。
言質は取ったとばかりに「SNSで見たりんご飴のお店とか水族館とか」と、さっそく行きたいデートスポットを列挙するルイだけど、大和に「翔平はどこ行きたい」と尋ねたのが運の尽き。


デート当日。2月の公園でキャッチボールを始める二人。
でもこれはこれで「なんかちょっと昔みたいでいい感じじゃん」とまんざらでもないルイ。

「もっと本気で投げていーよ。取るだけはできるんだから」

と昔取った杵柄で、よりキャッチボールを楽しもうとするルイだけど、しばらくするともう限界。
はっきりした描写はなかったけど、おそらく今の大和相手では「取る」ことだけでも相当削られるんだろうなあ。


そのまま二人してファミレスへ。
そこでルイに有名選手があげているトレーニングや食事についての動画を見せられ食いつく大和。
大和は動画なんかはまったく見ないタイプで、代わりにいろいろチェックしていたとのこと。
思いのほか食いつかれ、スマホを渡すときに指が触れたことにも赤面するルイ。


頼んでいた料理も運ばれてきたが、ルイが頼んだメニューは意外にも大和と同じステーキ。
こんなガッツリしたものを食べるルイに驚く大和だが、ルイ曰く「今ダイエット中だから、肉なら半分あげても(大和が)美味しく食べられるでしょ」とのこと。
ルイの気遣いに感謝する大和。


大和への気遣いもありつつも、久々のステーキにご満悦のルイだが、大和の「俺はファミレス自体久しぶりだわ」という言葉に何かを察し、だけど口ごもる。


食事のあとは少し渋る大和を誘って表参道へウィンドウショッピング。
スポーツ店をのぞいたり、ジーンズショップに入ったり、ガチャガチャを回してみたり、歩道橋の上で二人で自撮りしてみたりして楽しむ二人。


夜の表参道を歩きながら大和の入寮の話も。
「翔平も寮楽しみ?」と尋ねるルイへ、少し間があって「…ああ」と答える大和。


そしてルイが食べたいと言っていたりんご飴屋の行列に並ぶ二人(笑)。


りんご飴を食べながら、結局自分が行きたいところばかりへ引っ張っていったことを謝るルイに、気晴らしになったからと気にしない大和。
次のデート先の提案をしているうちに駅へ到着。
乗る電車が違うため、そこでお別れの二人だが、大和の後姿を見て駆け寄るルイ。

「翔平、今日ずっと何か言いたそうだった!」

言い当てられて「なんでわかった」と驚く大和だが、「あんた顔に出やすいのよ」と先日妹にされたのと似たような指摘をされて、さすがにちょっとショックを受ける(笑)。


だけど今はそんなことより今日ルイに尋ねたかったことを尋ねる方が大事。

「…ルイは自分の気持ち何度も全部他人(ひと)に言うだろう? そういうのって怖くないのか?」


それを聞いたルイは、少しの間とともに大きく笑う。
そのことは謝りつつ「デリカシーがない」と苦笑気味のルイ。

そして少し呼吸を整えてから、自分の気持ちを押し殺しつつ笑顔でアドバイスする。

「口に出しているのは全部じゃなくて大切なことだけ。不安もあるけど言葉にしないと気持ちは伝わらない。何もしないでゲームセットなんて嫌だから」


その後、大和と別れたルイは、親友の律子の家を訪れ、号泣しながら彼女にすがりつく。

「翔平のアホ! バカ! 超どんかん男!」
「でも私もバカなの…だって好きなんだもん」


それで何かを察したリツコに軽く頭をポンポンと叩かれ慰められたルイ。

「今日は朝まで飲み明かすわよ!」
「はいはい、ジュースでね」


――「他人に何度も全部言う」
この場合「他人」とは大和のことで、「何度も全部言う」とは告白も含めた大和への愛情表現全般。
それが怖いというのは大和が同じことをしようとしているということ。
それもルイじゃない、別の女に対して。

最初読んだときはわからなかったんですが、何度も読み返しているうちに、たぶんそういうことなんじゃないかなと。


その相談をルイ本人にするあたり「デリカシーがない」と言われてもしゃあないわな(苦笑い)。
ただまあ、ちょっとだけ大和を弁護するならば、昼寝しているときに体にサラダオイル塗られて写真撮られたり、ビデオカメラであそこを撮られそうになったりしていれば、そういうところの配慮が欠けがちになるのは仕方ないかもしれない(苦笑い)。


だけどルイも最初の頃に比べると、すごく変化してきている。
最初は(今も結構そうだけど(苦笑い))自分の考えや好み、やり方を(野球に関して以外は)一方的に大和に押しつけてうんざりされていたけど、最近は「本当に大和のためになること」を考えて努力するようになっている。
今回も大和が知らなそうな、ためになる動画をチェックして教えていたし、ステーキについてもそう。

なにより冒頭の「砂糖控えめ手作りプロテインチョコバー」。
ルイはいわゆるメシマズキャラで、食えたもんじゃない料理ばかり作っていたんだけど、どうやらちゃんと食べられるものを作れるようになってきているらしい。
文化祭のとき「翔平を落とすには餌づけが一番?」と遅ればせながら気づいて、きちんとした努力をしているのが感じられます。


だけどそれだけに大和にとっての八雲さんの存在の大きさを、ようやく実感しはじめたのかもしれない。
ただ以前なら単純に嫉妬の炎を燃やすだけのところを(第一巻 第6膳 暴走JKルイ登場 など)、大和の気持ちを一番に考え、自分の気持ちを抑えて笑顔で背中を押してしまった。
大和のデリカシーのなさを笑ったり、呼吸を整えたりしたのは、そういう自分の気持ちを少しでも落ち着ける必要があったためでもあるんだろうな。


個人的には、最終的に大和はルイとくっつくんじゃないかなと思ってたりします。
ルイは奇行があらたまり、実際的な意味でも大和を支えていけるようになったとすれば、もともとの野球に対する情熱や造詣もあり、奥さんや恋人としてだけでなく「野球選手」としての大和も助けてゆける、理想的なパートナーになれそうですから。
ぼくの中では八雲さんは大和にとっての「メーテル」なんですよね。


それに大和と八雲さんが一緒になるには、ちょっといろいろハードルがありすぎる。
二人が「愛のために生きるわ!」というタイプなら、障害も愛が深まる要素になるのかもしれない。
でも大和はそもそもそういうタイプではないし、八雲さんも愛情そのものに情熱を注ぐのではなく、愛情をベースにした穏やかで幸せな生活を最も貴重に思うタイプなんじゃなかろうか。
だからこの二人の場合、ハードルにぶつかり、乗り越える過程で愛情が深まるのではなく、逆に疲弊していって、最後には疲れ切って破局してしまうんじゃないかなと…
その点ルイであれば、八雲さんと一緒になるために必要な障害とはほとんど無縁でいられますから。
あの二人には、そんな思いをしてほしくない。


将来、メジャーのバッターボックスに立つ大和と、それをスタンドから見つめる、大和と結婚して一緒に渡米しているルイ。そしてその中継をテレビで観る、他の人と再婚して子供も産まれた八雲さん。
そういう図が、ぼくの中ではちょっと見えています。



★おまけマンガ


久しぶりに雪が積もった朝の東京。
八雲さんと大和のアパートの前も新雪が降り積もっている。
雪はやんで晴れてはいるけど「パートも休みだし、このアパートじゃ若い方だから」と、雪かきをすることにした八雲さん。
ただし「イイコトしちゃお」と、他にもちょっと理由というか思惑もあるらしい。


新雪を踏んで穢す喜びにも浸りながら雪かきをする八雲さん(笑)。
だけどかき終える頃には日も昇って気温も上がり、「雪かきしなくても溶けてたわ」とセーターの首から風を送る。
とはいえ(おそらく)「イイコト」の一つ、雪だるまはすでに作られていて、ちょっと小枝や小石で顔もつけたりする(笑)。


そのあとは大和の夕食の用意。
大根を大量におろし(雪かきも相まって明日は腕パンパンを覚悟の上(笑))、それを丸めて土鍋に二段で盛ったのを二つ作る。
さらに切った海苔で顔をつけ、できあがったのは

・真冬の雪だるまみぞれ鍋 大和クンとさくらちゃんバージョン


帰宅してきた大和はアパートの前に雪だるまを見るが、その顔が自分を模しているとは気づかず「変な顔」という感想で終わり(笑)。


――イイコトが具体的に何かはっきりしなかったんですが、たぶん「雪だるま」と「それに着想した雪だるま鍋」のことかなーと。

しかし八雲さんは芸術のセンスがある。大和もさくらもそっくり(笑)。
大和も自分だと返って気づけないものかもしれないが、他の人はきっとすぐに気づいたろうな(笑)。



★とらのあな限定購入特典 特別描き下ろし小冊子「未亡人(29)と高校球児(16)が入れ替わっちゃう話 前編」


ちょっとした流れで近づいて、軽くぶつかってしまった八雲さんと大和。人格が入れ替わる(笑)。


夢かとも思う二人だが、とりあえず学校へ行かなければならないと、大和になった八雲さんは朝練へ向かう。


いつもに比べ表情が明るく愛想がよかったり、ダッシュのときもいつも通り速いが変なフォーム(ダイゴ曰く「巨乳走り」)で走る大和に、チームメイトは爆笑したり困惑したり。


八雲さんも普段の自分より身体が軽く疲れないことに感動したり、「得意な科目があってよかった」と家庭科でにんじんを手慣れた様子で切ったりして。
そんな大和にいぶかしさをおぼえるルイだけど、「今日の髪型似合ってるな」という大和(八雲さん)には、赤面しつつも「翔平が変なんだけどー!」とリツコにどもりながら報告(相談?)する始末(「いつもわりと変だと思うけど」というリツコもなかなかヒドイ)(笑)。


一方その頃、八雲さんになった大和は、自分の胸をセーターの上からガン見しつつ、両手が伸びそうで止まっていて…(笑)


――小冊子ではお約束というかベタというか、そういうお話を里見先生が楽しく描いてくれてるようで(笑)。
背表紙では、エプロンをつけた大和(八雲さん)が「お布団が軽いわー!!」と驚き感動している(笑)。

でも実際、全国区の選手の身体って自分が動かすとどう感じるのか、ちょっと興味あるな。
中古の軽自動車から最新型のレーシングマシンに乗り換えたくらい違うかもしれない(笑)。



★サウナ好きって話(カバー下エッセイ漫画)


スーパー銭湯は好きだがサウナ&水風呂は敬遠していた里見U先生。
だけどまんしゅうきつこ先生の「漫遊ワンダーランド」で「頭がパッカーンとなり、ぐにゃあとなり、大きな自分に守られてる感じ」がして「整う」というのを読んで体験してみることに。


・サウナを6分耐える。
・水風呂に入って数秒「羽衣」と呼ばれる暖かい無敵のベールの快感に包まれる。
・露天の外気浴へ。視界や脳がぐにゃあとなってパッカーンとなる!


上のような手順で「整」った里見先生。「サウナって最高ーー!!」と認識があらたまり、週1くらいで通いたくなったそうです。


――最近自分もサウナは耐えられなくなってきたなあ。
水風呂も年齢を考えるとちょっと怖いから敬遠気味だったけど、今度注意しながらやってみようかな。
脳がパッカーンとなりたい(笑)。




――料理の描写少なめなのが、エピソード中心ではなく終わりが近づいているのを感じさせるんだよなあ…
そして巻末の予告では、次の11巻が最終巻だということ。
発売日は来年(2021年)の春。大和と八雲さんの別れの時季にピッタリ合ってるんだよなあ…


巻末では他にも、電子書籍のキャンペーンで募集したユーザーリクエストによる描き下ろしイラストも。

「八雲さんが幼女になってしまったところを大和クンがお世話してあげているところ」
そういうイラストでした(タイトルは「大和クン八雲さんは餌づけがしたい。」)(笑)。

かわいいけども、個人的にはロリではなく今の八雲さんが好きなので(照)。
だから巻頭イラストがいけません! 歯ブラシをくわえ、上半身裸で髪ブラで隠す八雲さんとかいけません!(笑)







毎回「とらのあな」特典、描き下ろし小冊子が欲しいため、平日発売だと週末まで買うのを控えなければならなかったんだけど(秋葉原まで行くため)、今回は土曜が発売日だったので当日購入ができました(笑)。


そんなわけでこのあとは10巻のネタバレが入りまくる感想ですよー。




★第65膳 年の瀬、大掃除中。


腰をいわした(傷めた)大家さんに頼まれて、アパートの屋根にのぼって雨どいの掃除をする大和。
といにたまった土に生える雑草の生命力に軽く驚きつつ黙々と仕事をする大和ですが、それを見つけた買い物帰りの八雲さんはビックリ。
落ちたら大変と軽く狼狽しつつ事情を聞き、年末で業者も混んでるとのことで代わり買って出た大和が「大丈夫」と危なげなく屋根を移動して仕事を続ける姿に、とりあえず何も言えなくなった八雲さん。
だけど気になってハラハラしながら目が離せない(笑)。


とはいえいつまでもそうしていられず、部屋に戻って自分も大掃除を始める八雲さん。
大和が移動して天井がぎしぎしと音を立てるたびに「屋根が抜けないかしら」との心配も(笑)。


そしてお昼。
掃除が一段落した八雲さんは屋根の上の大和を昼食に誘う(メニューはチャーハン)。
ちょうど雨どいの掃除が終わった大和も礼を言いつつこころよく受けますが、ふと思いつき、逆に八雲さんを屋根の上へ誘う。
大和と違って運動神経がほぼ死滅している八雲さんは躊躇するが、重ねて誘われ、ついにはしごに足をかける。
屋根へ上がる際には大和に手を取ってもらいますが、意識するのは大和の方(笑)。


そして見えるのは富士山。
珍しくちょっと強引に大和が誘ったのはこれを八雲さんに見せたかったからで、八雲さんもちょっと感激し、手を合わせて拝む(笑)。
礼を言う八雲さんだけど、やはり高いところはアレらしく、すぐに部屋へ戻る(笑)。


鍋のような大きな皿に山盛りにされたチャーハンを、自分の皿に取りながらの昼食。
そのさなかに互いの年末年始の予定を確認する二人(どちらも数日実家へ帰省)。


さらに八雲さんは「枕の下に入れて寝るとよい初夢が見られる!」と大和に七福神のイラスト(手描き)を渡す。
クリスマスにもらった腹巻きといい、最近の八雲さんがおばあちゃんっぽいと感じる大和だが、賢明にも口にはせず、素直に礼を言って受け取る(笑)。


チャーハンを食べ終え、今年最後の「餌づけ」も終えると、互いにあらためて今年一年(出会ってから10か月)の礼を言う二人。


七福神のイラストをダンナさんの遺影にも供える八雲さんでこの回終わり。


――明確に書かれてはいなかったけど、おそらくは大みそか。
だけど特になんとはない一日。
それがとても貴重な日々だと、今巻を読み進めていくと感じます。

東京でも空気が澄んで、他の建物に邪魔をされなければ、結構富士山は見えます(笑)。

大家さんも気楽に頼んだわけではないだろうけど、やはり超真剣にやっているスポーツ選手にそういうことをさせるのはよくないし、大和も引き受けるべきではない。
が、困ってる人を助ける、恩のある人にお返しするという「社会で暮らす人間」としてのベースは野球以上に大切にしないといけないところでもあるから、一概に否定や非難もできないな。

あと24ページ三コマ目の大和の表情が、幼さを残しつつたくましさも感じられて、なんだかとてもよかったです(照)。



★第66膳 今年も君といっしょにごはん。


帰省から戻ってきて、ほんの数日練習を休んで実家でゴロゴロしていただけで「体がなまった」と感じる大和は、さっそくアパート前で素振りを開始。
と、そこに八雲さんも帰宅。しかもクルマで。
そのことにちょっと意外さを感じた大和は、荷物を助手席から降ろした八雲さんを置いて走り去るクルマを見送りつつ尋ねたところ、お父さんに送ってもらったとのこと。
大量の荷物は実家の両親が持たせたもので、餅とかおせちとかで、今夜の餌づけメニューは決まり(笑)。
そしてきちんと新年の挨拶をする二人。


八雲さんの荷物を持って部屋へあがる大和は、ちょっと気になっていたらしい「自分とのことを両親にどう話しているか」を八雲さんに尋ねてみる。
八雲さんの答えは「話していない」。説明がややこしくてめんどくさいのが理由とのこと。


あらためて素振りを始める大和。
風切り音は相当のものだが、八雲さんもさすがに慣れてきたらしく驚きはない。アパート前の掃除をしながら大和と会話。
「初詣行った?」という正月らしいものだったが、意外にも大和はこれまで初詣そのものに行ったことがないと。
両親があまりそういうことに興味がなく、友達と集まると自然と野球をしちゃうからとか。


そうなると八雲さんとしても初詣に誘う流れになる。
素振り等の練習を終えた後、少し歩くが近所の穴場的な小さい神社へ向かう二人。
初詣の作法(?)を大和に教え、自分は500円と奮発して大和の甲子園出場を神様にお願いする八雲さん。


おみくじは大和が大吉、八雲さんが末吉。
大和の健康運が良好なことに一番ホッとする八雲さんで、自分の「新しいことを始めると吉」という内容には少し思うところあり。


と、ここで大和が「かーちゃんから」と八雲さんにお年玉を差し出す(笑)。
年齢的にもさすがに恐縮して遠慮する八雲さんで、しかも彼女からも大和に用意していた、お年玉(笑)。
大和としてももらってもらえないと困るということで、結局交換することで落着。


帰宅してから新年最初の夕食は、


・餅多数(納豆、いそべ焼き、きなこ、みぞれ、チーズベーコン、お好み)
・ほぼ手をつけなかったおせち


と、八雲さんが実家から持ち帰った残り物オンパレード(笑)。
しかしもちろん大和は大満足(笑)。


餅食べながら大和家のシーズンイベントのことを尋ねてみると、妹のさくらのためにクリスマスとか形だけは最低限やっているらしい。
正月のさくらは、ルイの姉のランと初詣やバーゲンに行っているらしいとのこと。


大和が帰宅したあと、今夜はほとんど使わなくてきれいなままのキッチンに「今年も一年よろしくね、キッチンちゃん」と笑顔で挨拶する八雲さん、で終わり。


――八雲さん父と大和がニアミス(笑)。
でも大和一家と違って八雲さんの両親は本編には出てこないのかもな。回想や電話では出てきたけど。
初詣行ったことがないというのもなかなかすごいが、やはり末っ子で女の子だと両親も気を遣うらしい。
長男で男の子の大和は、本人が気にしないこともあって、ほぼほったらかしみたいだが(笑)。


6巻のおまけマンガでも感じたけど、幼なじみとはいえ年が離れてるだけあって、ランとさくらは他の二人とはちょっと違う関係みたいだな。
ガサツで無口で無愛想なアニキしかいないさくらには、面倒見のいいお姉さんであるランは慕いがいがあるだろうし、ランには最近とみに奇行が多いルイと比べ、まだまだ素直なさくらはかわいがりがいがあるだろうからね(笑)。



★第67膳 通帳


残高が0円になった預金通帳を見ながら、どこか安堵や、なにがしかの達成感を覚える八雲さん。


――過去。おそらく入籍直前か直後くらい。
結婚雑誌の「結婚式の平均額は352万円」という記事にうめき声をあげる八雲さん。
お金はあるし、式を挙げたいという八雲さんの想いはかなえてあげたいダンナさんだが、八雲さんの方がちょっと複雑。
大学は両親の金で卒業し、就職して働き始めたとはいえ結婚式の費用も夫持ちでは、自分は何もしていないのが気になる。


そんなわけで結婚式費用をこれから二人して貯めていこうと提案。
概算では月に5~8万円くらい貯めていけば、もともとの八雲さんの貯金とあわせて一年半くらいで目標額に届く。
ダンナさんにも否やはなく、結婚式を挙げるため、専用の通帳を作った二人。


それからおそらく一年ちょっとが過ぎたころ。
節約レシピも使いこなし、夕食を作りながら予定より早く目標額に届きそうなことに喜んでいた八雲さん。
そこへダンナさんからカエルコールがかかってきて…と思いきや…


それから数か月後の桜が咲くころ。大和と出会う約一年前。
仕事を辞め、ダンナさんが以前住んでいたアパートで一人暮らしを始める八雲さんの姿が。
まだ半死人のような表情をしながら、二人で貯めた350万円を生活費として――


二年前とまったく違う表情で、遺影に向かって残高ゼロになった通帳を見せて報告する八雲さん。
脳裏に浮かぶのは大和のこと。
「本当にありがとう」と礼を言うのは、ダンナさんに対してか、自分を立ち直らせてくれた大和に対してか、その両方に対してか。


出かけた八雲さんが手にしたのは就職情報誌。
夜、真剣にそれを読む八雲さん。


――今回は少し物語の根幹に触れるお話。
あの感じだとダンナさんはおそらく事故死だったんだろうなあ。
八雲さんの生活費がどうなってるのか連載開始当初から気にはなってたんだけど、そういうことだったか。
これを使い切ることが八雲さんの中で一つの区切りみたいなところもあったんだろうけど、それでも当時は使い切ったところでどう変わるわけでもないという気持ちもあったはず。
大和との出会いと存在は本当に大きかったと、誰よりも八雲さんが感じているんだろうな。

ダンナさんと生活しているころの八雲さんの髪が肩にかかるくらいのセミロングで、アパートに住み始めた頃には肩甲骨あたりまで伸びていて、今は腰のあたりまでの長さになっているところに、時間と、彼女の心情の変化が感じられるような気がしています。
セミロング八雲さんもかわいくて好きなんだが(笑)。



★第68膳 パートタイマー柊子!!


エプロン姿の八雲さんだが、いつもと場所が違う。
生活費を稼ぐため、パートの仕事に就いた八雲さん。
仕事先はさもありなんというべきか、自分の特長を活かして選んだであろうホカ弁屋(笑)。


とはいえ八雲さん、就職経験もあり働くのが初めてなわけではないとはいえ、やはり始めたばかりではうまくいくはずもなく、注文ミスなどの失敗も多い。


また個人経営の弁当屋で、調理係を兼ねる店長のおばちゃんがなかなかキツイ。
モタモタする八雲さんを叱り飛ばしたり、注意してくる内容も細々したもので、八雲さんとしてもいささかビクつく。


が、それもおばちゃんが怖いというだけではなくて、久々の仕事とはいえもう少しうまくできると思っていたのがそうじゃなかったのも少しショックだったらしい。
夕食を食べながら落ち込むほどで、大和がなぐさめる始末(笑)。


問題は、同時にこなさなければならない仕事が多く(金の受け渡し、注文、電話取りなど)、その処理が間に合わないのが一番の理由で、野球のプレーではどうしているかを尋ねたところ、「状況に応じて次のプレーの優先順位をつけて準備しておく」との答え。
それを参考に、夜、自分の中で優先順位をまとめる八雲さん。


そして次の仕事の日。
テキパキとはいかないまでも、仕事をこなす八雲さん。
「みっともないからメモは取るな」と言われてたにも関わらず、メモ帳を手放さない八雲さんにいささか不満げな店長ではあるが、八雲さんがやってきてから店が以前より繁盛していることにふと気づく。


その八雲さんは「モタモタ」の原因ながらも、笑顔でていねいな接客を心がけ、いつの間にか「優しい新人美人パートさん」として客(男女問わず)のひそかな人気者になっていた(笑)。


そのことにも気づいたらしい店長さん、帰り際呼び止められてビクつき謝る八雲さんに「接客はあれでやってみな」と彼女のやり方を認める。


帰り道で事の意外さに混乱していた八雲さんだけど、どうやらあの口やかましい店長に「誉められたらしい。認められたらしい」と気づくと、ニヤける顔を抑えきれず早足で帰路を進む(笑)。
大和との夕食時(メニュー:かにさん・たこさんジャーマンポテト)もニヤけ顔は変わらず、それに気づいた大和に理由を説明し始めて…この回終わり。


――作中でそうは言ってなかったけど、ああいう弁当は最近もホカホカ弁当、ホカ弁と言うんだろうか(苦笑い)。

前回からの自然な流れで仕事を始めた八雲さん。
この「自然な流れ」で踏み出せるのがすごく大きい。
以前のままの八雲さんだったら、ものすごく気合を入れて踏み出さないといけなかっただろうから。


仕事中はポニーテールの八雲さんかわいい(笑)。
そして疲れて落ち込んで帰ってきたせいか(あるいはめんどくさいせいか(笑))、ポニテのまま大和に夕食を出すのもかわいい(笑)。



★第69膳 タイム・リミット


爪を切りながら母親と電話する大和だが「八雲さんに伝えたの? 適当にしちゃ駄目だからね」という言葉には「わかってる」と真剣に、あるいはどこか深刻に応じる。


職場で初めての給料をもらう八雲さん。
金額が多いことにいぶかしさを覚える八雲さんだが「アンタが来てから繁盛してね」と臨時ボーナスをつけてくれた店長。


その日の夕方、アパートの自室でダダ泣きしている八雲さんだが、臨時ボーナスのためではなく、玉ねぎすりおろしのせい(帰ってきた大和の目に染みるほど(笑))。
じっくり丸々2ページを使って「ご飯の親友」しょうが焼きの調理シーン(笑)。


「いただきます」とともに、いつものように暴食に入る大和(笑)。
しょうが焼きにマヨをつけて、キャベツを巻いて一口。
それだけでご飯一杯を食べきる(笑)。


肉一枚でご飯一杯のペースはさすがの八雲さんも想定外(笑)。
懸念してた通り、6.5合炊きの炊飯器があっという間にカラに(笑)。


あわてる八雲さんだが大和は「あ、了解っす」と軽いもの(笑)。
いつも以上の食欲の理由に思い当たらない八雲さんだったが、大和の「白米がめっちゃうまかったような…」という答えに真実驚く(笑)。
というのも今夜は初任給が出たのでいつもよりワンランク上のお米を使っていたのだ。


八雲さんの驚きは、約一年前、餌づけ初期の頃、大和用に「おいしくたくさん炊ける高い炊飯器」に買い替えたのに、まったく気づいてもらえなかった経験があるためで(第一巻 第2膳 八雲さん、炊飯器を買う。)、今明かされた事実に大和も「当時はカップラーメンとかばかり食ってたから舌がバカになってたのかも」と自分に驚く(笑)。


そんな話に笑いながらりんごを剥き始める八雲さんに、少しの間ができた大和は、意を決して母親に念を押されたことを告げようとする。
だけどその大和の機先を制するように、八雲さんが切り出す。

「そういえば大和クン。4月にはこのアパートを出ていくの?」

言おうとしてなかなか言えなかったことをズバリ言われて愕然とする大和に、りんごを剥きながら八雲さんは続ける。
大和がこのアパートにやってきたのは入学が遅れて寮が埋まって入れなかったためで、三年生が卒業して退寮すれば当然大和が入る部屋が空くだろうから――と。

そんな八雲さんに大和も一言で答える――「…3月末から」。


「そっかあ。じゃあご飯作ってあげられるのもあと2か月だ。これで野球漬けだね」
剥いて切ったりんごを出す八雲さん。それを食べる大和。
「りんご美味しい?」
「…うまいっす」
「そっか。よかった」


その夜。
どうやら大和の答えに動揺して指を切っていたらしい八雲さん。
自分で手当てをしてから声や表情にはそれを出していなかっただろうか、涙を浮かべながらダンナさんの遺影に語りかける。

「さみしくなるけど、仕方ないよね」


――物語の最終コーナーへ、本当に大きな大きなターニングポイント。
実は連載当初は大和が卒業するまでの三年間の物語だと勝手に思い込んでたんですよね。
それにしては大和の八雲さんへの心情の変化とか進みが早いなといぶかしさも覚えていたんですが(2年生あたりからだと思ってた)、「大和の事情を考えれば2年になったら出て行くが自然な流れだ」と遅ればせながら途中で気がつきまして。
でもまだまだずっと続いてほしいと思ってたから、この予想はハズレてくれた方がよかったんですが…







ネタバレ入ります。
昨日の続き!
前編はこちらhttp://suntu500.blog.jp/archives/1077247838.html



★第62膳 大きいことはいいことだ!?


今回はルイちゃん話。暴走編(笑)。


学校の昼休み、友達と昼食を食べるルイ。
と、その中の一人で彼氏持ちの洋子ちゃんがみんなに相談を持ちかけてくる。
その内容が「そういう雰囲気になったけど彼のが大きくて入らなかった」という生々しいもの(笑)。
色めきビビるルイたち未経験組。
それゆえいい解決法など思いつくはずもなく、なし崩しに洋子ちゃんへの熱烈インタビューへ(笑)。


放課後、ルイとリツコ、ドーナツ屋「ミスドーナツ」のイートインコーナー。
ポン●リングの穴に指を入れるルイを渋面でたしなめるリツコ(笑)。
だがルイ本人としては洋子ちゃんの相談内容は重大事だったらしい。
「万が一にも翔平(大和)やコウタのが超ビッグサイズだったらどうするのよ!」
コウタはリツコの幼なじみで大和のチームメイト。
ルイ曰く「現状リツコを突き破る可能性が一番高い」(笑)。


その露骨な表現に怒るリツコだが、彼女も興味がないわけではない。
べつにいやらしい意味だけではなく、自分も将来経験するだろう事柄だけに、完全に他人事ではない話だし。
「もしかして洋子ちゃんのサイズの問題なのかな。まあ自分のサイズなんてわからないけど」
というリツコに「私は普通サイズだと思うよ。月一で見てるもん(手鏡で)」などと答えるルイ(笑)。
その奇行に驚くリツコだが、逆に驚くルイ。
「自分の体で知らない部分があるって許せるの!?」
間違ってはいない意見のため微妙に返答に困るリツコ(笑)。


しかしルイにとって問題はそこではない。
「翔平、デカそうなんだよなあ…」
あくまでなんとなくだが、つきあっていざってときに入らなかったらガッカリされるかも、という杞憂だか憂慮だかわからない不安をおぼえるルイ。
「もし本当にデカいなら私一人で鍛錬しないと…」という前向きなのかどうか微妙な発想も出てきます(笑)。


「幼なじみなんだから一緒にお風呂に入ったりしなかったの?」
というリツコの問いだが、当時はそんなことみじんも考えてなかったため覚えていない。
「ガン見しとけばよかった…」というのもあれな後悔だが(笑)。


だがこうなると行き着く先は一つ。
「とにかく確認しなきゃ。翔平のアソコ」
無理でしょというリツコだが、暴走モードに入ったルイは止められない(笑)。


別の日、「プロテイン使ったお菓子があるから」と家へ誘うルイに無警戒で応じる大和(笑)。
その日は部活もないため、学校が終わるとそのままルイ家のマンションへ。
他に誰もいない中、持ってきたジュースをわざとらしく大和にこぼすルイ。
「キャーごめんなさい! シャツは洗っておくから翔平はシャワー入ってきて!」
わざとらしくもまくしたてるルイの勢いに押されてか、素直にバスルームへ向かう大和。


そして大和がシャワーを浴びているところへ、これまたわざとらしくタオル(とビデオカメラ)を持って入ってゆくルイ…だがそこには服を着たままの大和(笑)。
「やっぱり絶対おかしいと思ったんだよ!」
すっかり彼女の奇行に慣れている大和に詰問され、バレたからには仕方なく正直に答えるルイ(笑)。


その突拍子もない内容と、それを越えるルイの突拍子もない行動にあきれる大和だが、ルイ本人としては大和との人生設計にとって大いなる問題。
「後生だから見せて。男根」
と、露骨に、直接的に懇願、そして強行(笑)。
大和を押し倒し、なんとか目的を達成しようとする(笑)。


「いいじゃない、減るもんじゃなし!」
「いろいろ減るわ!」
という心温まる会話の中、姉のランが帰ってきて、幼なじみを押し倒す妹の姿に強制終了、レフェリーストップ(笑)。


アパートで八雲さんに「げっそりしてるけど自主練ハードだったの?」と尋ねられるも「いえ別に」と答えるしかない大和と、姉にこっぴどく説教されながらも「やっぱ野球部の更衣室かしら」と、まったく懲りてないルイ(笑)。


――八雲さんからは「アイドルみたいにかわいい」と賛嘆され、飛び入り参加の学園祭ミスコンでブッチギリの優勝を果たすほど美少女なのに、大和のこととなると暴走が過ぎて残念というか変態気味になってしまうルイ(笑)。
本人にその自覚がないこともアレだが、「そういうこと」の表現もなぜかおっさんくさくなってしまうのは、戸田へヤ●ルト二軍の練習や試合を観に行くとき、おっさんのヤク●トファンと一緒だからだろうか(笑)(第一巻「おまけマンガ」参照)。
あとガン見しても幼稚園だか小学校低学年だかの頃のサイズは参考になりません(笑)。



★第63膳 ひとりぼっちのお留守番


八雲さんが大和の食事を作らなくなって三日。
特に不穏な理由があるわけではなく、大和が野球部の冬練合宿(五日間)へ行ったためです。


しかし日常のサイクルが大和の食事作りで回っていた八雲さん。
自分のためだけに料理をする気もおこらず、朝食兼昼食のブランチはカップやきそばですませ、そのまま寝転がってしまう怠惰ぶり。
さすがにこれはマズいと少し腹筋を始める。
「大和クンも頑張ってるもんね」
その頃の大和は合宿で腹筋1000回中。


ダイエットついでにスーパーまでジョギングする八雲さん。
「大和クンの走ってる距離に比べたらちょちょいのちょいだもんね」
その頃の大和も、すでに何キロ走ったかもわからないほどのハードロードワーク中。


スーパーでは何を買うかに悩む八雲さん。
冬で食材は豊富なのだが、「なんでも大量に」食べる大和がいないし、自分のためだけに料理する気にもならないため、逆に選択肢が少ないのだ。
結局その日の夕食のおかずは


・長ネギのお味噌汁
・ほうれん草のお浸し
・きんぴらごぼう


と大和がいるときと比べものにならないほど簡素で少量なもの。
「大和クンちゃんと美味しいもの食べてるかな」
その頃の大和たちは食事に苦労する。
とにかく練習がきつすぎて、腹筋とか腕とかが痛くて箸が持てず、食欲も湧かない。
大和は基礎能力が違うので他の一年部員よりマシだが、それでもスプーンでカレーを食うのがやっと。


次の日、前日思いついた場所へ出かけることにした八雲さん。
お弁当を作り、電車に乗って到着したのはダンナさんのお墓がある霊園。
「来ちゃった」と笑顔で亡夫の墓石に話しかける八雲さん。


弁当の中身は当然ダンナさんの好物ばかり。
それをお供えしてから八雲さんは墓掃除に入る。


・牛スジの煮込み
・ポテトサラダ
・八雲さん特製肉じゃが
・からあげ
・明太マヨじゃがいも
・鱈の西京焼き
・ゆかりふりかけご飯


掃除を終えた八雲さんも、お供えしたお弁当を食べ始める。
「こういうおつまみっぽいもの食べてると、なんか一緒にいるみたいねえ」と笑いながらダンナさんに語りかけつつ。


翌日の夜、ようやく帰ってきた大和だが、身体は微妙に震え、表情はげんなりし、ケガはしていないが足をひきずる想像以上のボロボロっぷりにさすがに八雲さんも驚く(笑)。
「ヤバいっす、筋肉痛でモモが上がらないっす…」


それでも食欲があるのはさすがで、五日ぶりの八雲さんの夕食にもひるむ様子は見せない。


・牛スジの煮込み
・なめこのお味噌汁
・鱈の西京焼き
・冷やしトマト
・だし巻き卵
・回鍋肉(ホイコーロー)
・ニラの卵とじ


このメニューに大和は「なんか渋いっすね」。
それを聞いた八雲さん、「確かに居酒屋っぽいかも…」とあらためて気づき、「イカンイカン、脳内があの人用になってた。大和クン用に戻さなきゃ」と軽く頭を振る。
大和も別に他意があったわけではなく、ただの印象を口にしただけで、さっそく「いただきます」と食べ始める。


「合宿ではどんなご飯が出たの?」
「うーん、こういう小皿がたくさんみたいな飯は出なくて、カレーとかすね」
そんな会話を交わしつつ、「八雲さんのカレーの方がうまかったっす」という感想を無意識に期待してしまった自分に羞恥する29歳未亡人(笑)(当然大和は言わない)。


大和と久しぶりの、いつも通りの食事風景の中、いつも速い彼のペースがいつもより速いことに気づく八雲さん。
本人に質しても自覚はあったようで、「大和クンは将来お酒飲みさんになるかもねえ」という八雲さんと、「え、そーすか?」と意外なことを言われた大和と、コマの片隅に見えるダンナさんの遺影。


――自分では気づいてないようだけど、今現在の生活と思考のほとんどすべてが大和中心になっている八雲さん。
そこに恋愛感情が入っているのかはさらに微妙で曖昧で、ほほえましくもほんのわずか、ほんのかすか、様々な何かを感じるお話でした。
運動部の冬合宿って、基礎体力をつけるためか、どこも相当ハードっぽい。
大和は「先輩たちの話を聞いてると疲労骨折したり飯食えなくなったりとかよくあるって…」と八雲さんを引かせていたけど、飯食えないはともかく、疲労骨折はどうだ、骨折は。
どうも大和の所属する野球部は、名門ではあっても悪い意味で前時代的なところが多いように見えて、いささか憤懣をおぼえることが多い気がするよ。



★第64膳 サンタクロースは夜なべをして


もうすぐクリスマス。
町も聖夜色に染められはじめ、八雲さんの思考もそちらへ向かう。
ただしほとんどが大和の食事のことだけど(笑)、もう一つ、プレゼント用に編んでいたマフラーが昨日完成したことも八雲さんを浮き立たせている。


と、おそろいの(おそらく)手編みマフラーをつけたカップルとすれ違う。
その姿にほほえましさをおぼえる八雲さんだが、微妙に何かに気づく。
自宅に帰り、完成したマフラーをあわてて取り出し、
「なんかテンション上がって編んじゃったけど、手編みのマフラーって、めっちゃ重いんじゃない!?」
そこに思い至ってしまった八雲さん、「ていうか29歳の女が高校生の男の子に手編みのマフラー渡すなんて犯罪じゃない!?」ということまで(笑)。


こうなるともうマフラーは渡せない。
でも捨てるなんてもったいないし、だけど他に渡せる相手もいない。
「やっぱり大和クンにあげたい…」
その気持ちは捨てきれない八雲さん、「実用的なものならOKなんじゃない?」と気づき、「クリスマスまであと五日…イケる!」と、マフラーに謝りつつ毛糸をほどきはじめる。


クリスマス当日。
この日も普通に練習があった大和は、いつも通りに八雲さんの部屋へやってくる。
が、目の下にクマを作り、疲労困憊の八雲さん。
「最近寝不足で…」
そんな彼女を心配する大和だが「大丈夫、今日はたぶんゆっくり眠れるから!」という彼女に、不得要領ながら「そーなんすか」ととりあえず納得する。


寝不足だがクリスマス、それ用のごちそうも用意した八雲さんも元気を取り戻し、テンションも普段より上がる。


・2種ダレの油淋鶏(ユーリンチー)
・ベーコンゴロゴロポテトサラダ
・ミートローフ
・卵と人参のスープ
・エビのプチグラタンパイ
・かぶの煮物


本当はチキンローストにしたかったがご飯のおかずにならないので油淋鶏にしたとのこと。
美味そうなのでどちらでもよさそうだった大和だが(笑)、食事の支度のため八雲さんが寝不足かと思い、八雲さんはあわてて否定。
そしていただきます。


「油淋鶏って米がすすむんで好き」
「タレが二種類とことかごちそうって感じ」
と大和にも好評で、八雲さんもにっこり。


ごちそうさまのあとはミニミニホールケーキ。
こればかりは大和だけでなく八雲さんも別腹で問題なく入る(笑)。


そしてお待ちかねのプレゼント。
渡したのはマフラーをほどいて作り直し腹巻き(笑)。
しかし「ハラマキ」が通じない大和にジェネレーションギャップを感じて軽くショックを受ける八雲さん、「ボディーウォーマーよ」と翻訳(?)して事なきを得る(笑)。


さらに意外にも、大和(と妹のさくらと彼の母親)からもプレゼントがあった。
兄妹からはさくらが選んだスノードーム、母親からは入浴剤。
思いもかけないプレゼントに喜ぶ八雲さん、さくらへのプレゼントも大和に渡す。


大和もさっそく腹巻きをつけて(八雲さんの感想は「大和クンお父さんみたい…」)、そのまま帰宅(笑)。
その夜は二つのプレゼントを枕元に、ぐっすり眠る八雲さん。


――5話越しでマフラー編に決着(笑)。
個人的には148ページ四コマ目の八雲さんの表情がかわいくて好きです。
自分は油淋鶏って(たぶん)食べたことないから食ってみたい。
あとプレゼントを妹に選ばせたのは大和のファインプレー(笑)。
さすがに自分のセンスには自信がなかったんだろうなあ。
そしてきっとルイはもらえてないんだろうな、プレゼント(苦笑い)。



★おまけマンガ


走ることへの精神的ハードルが下がったらしい八雲さん。
親友の由梨に誘われたか誘ったかはわかりませんが、「行列のできる喫茶店まで走って行ってホットドッグとコーヒーをテイクアウトして河原で食べよう会」を催すことになる(笑)。
要するに「エサをもうけてジョギングしよう」ということらしいですが、由梨としては出不精でスポーツ音痴の八雲さんが、外に出て走ろうっていうこと自体が嬉しかったり安心したりするのかもしれない。


そんなわけで八雲さんにあわせてゆっくり走り始めますが、すぐに眉を寄せる由梨。
「柊子さー、今つけてるのってフツーのブラ?」
揺れるんです、ちょっと走っただけで(笑)。


「うん、そうだよ。フツーのブラ…じゃダメかな?」
「柊子くらいデカいと垂れる原因になるからダメだ!」


という真っ当な理由で、まずはスポーツショップへ向かうことに。
八雲さんは胸を抑えながら(笑)。


そしてお店でいくつかスポーツブラを試してみる八雲さん。
中には八雲さんの胸のデカさではホールド力が足りなくて揺れるタイプもありましたが(笑)、とりあえずよさそうなものを購入、その場でつけて再度ジョギングへ。


「おおー、揺れない!」と軽く飛び跳ねても平気なスポブラに軽く感動する八雲さん(笑)。
無事に由梨とお目当ての喫茶店まで走り着き、お目当てのホットドッグと砂糖たっぷりのコーヒーにご満悦。


由梨「じゃ、次は5Km先のパンケーキ屋さんに行こっか」
八雲「まさか食べ物で釣ろうとしてる!?」


――揺れるのは大変だよなー、というお話(笑)。
八雲さんは154cmと、どちらかといえば身長は低めだけに、トランジスタグラマーというやつかな。
これもまた古い言い方だろうけども(笑)。



★とらのあな限定購入特典 特別描き下ろし小冊子「隣の部屋の未亡人(29)がお注射されちゃう本。」


「いれるとき少し痛いから我慢してね」「嫌だったら目をつぶっててもいいんだよ」というお約束のそれらしい会話とともに、腕にインフルエンザの予防接種注射を受ける八雲さん(笑)。
その八雲さんが診察室から出てきたのを「お疲れ様です」と出迎える大和。
どうやら彼も同じく受ける予定つもりだったようで、ついでに一緒に病院にやってきたみたいです(注射は先に受けたらしい)。


受付で支払いをすませる八雲さん。
と、受付のおばさん、一緒にいる大和を見て「あら八雲さん、旦那さんですか?」。
それに驚き、あわてて動揺しつつ否定する八雲さん。
大和は病院備え付けらしい「風邪予防」の小冊子を読んでて聞いてない(笑)。


無事予防接種を受けられて安心する八雲さん、「子供の頃から注射後に買って帰るものがある」と大和を誘ってコンビニへ。


購入したのはプリン。
「ご褒美プリンがないと注射したって感じしないのよねえ」と、アパートでプリンを食べつつご満悦の八雲さんと、「大人になってもそーいうのあるのか」という感想とともに、やはりプリンを食べる大和(笑)。


――表紙・背表紙は看護師姿の八雲さんというのもお約束ですが、年齢表記が(29)になっているのも細かい(笑)。


しかし初期の頃ならこんな勘違いをされたら八雲さん、キョトンとしつつ笑って否定するだけだったろうが、いささか反応が微妙なモノになっているな。
小冊子ですら細かく変化が続いている。



――秋が過ぎ、冬になっての第9巻。
読みながらどうにもなんとなく、終わりに近づいているような感覚もあって、いささか落ち着かない気分もあるんですよねえ。
この手のテーマのマンガで9巻、10巻まで行くのも珍しい気もするし…(たいてい2~3巻で終わることが多いような)。


個人的には無意識に、大和が高校を卒業するまでのお話だと勝手に思ってた節があるので、その意味でも早いと感じるところがあります。
とはいえぼくがそう感じてるというだけのことで、このまま20巻、30巻と続くかもしれないし、それはそれでバッチリだ(笑)。





ネタバレ入りますので注意です。



毎巻買うごとに言ってるように、近所の本屋でなら発売日に買えるんですが、「とらのあな」恒例特典である小冊子を手に入れようと思うと、どうしても休日まで待たないといけないんですよね。
さすがに仕事終わってから秋葉原までは行けない(苦笑い)。



★第58膳 真夜中のハッピーバースデー


八雲さん、今回で29歳になりました(笑)(誕生日12月3日)。
ずっと「28歳未亡人」っていうのが慣用句だったけど、変わっちゃったなあ。
どちらもいいんだが(笑)。


八雲さん自身は自分の誕生日は忘れてたんですが、前日(12月2日)大和に確認されて思い出す(大和は妹のさくらから聞いていた)。
そんなわけで大和、当日はケーキを買ってくると宣言。


次の日の昼休み。学校を抜け出して予約したケーキ屋へ走る大和。
だけどルイに教えてもらったオススメのケーキ屋だったもので、そのラブリーな店構えに軽くおじけづく(笑)。
ルイちゃんは自分がもらえると思っての紹介だったのでいろいろ気の毒ではあるんだけども(苦笑い)。


店員さんの神戸屋チックな制服にも軽くビビりつつ(笑)、無事、小さめの誕生日ホールケーキをゲット(チョコのネームプレート・ロウソク付)。
急いで学校に帰り、練習が終わるまで家庭科室の冷蔵庫で保存。


が、折悪く、二年生の買い食いが監督にバレたとのことで、こうなると練習時間が長くなるのは必至。
さらに運悪く、早く八雲さんにケーキを持って帰りたい大和がチラチラ時計を見ていたことも監督に気づかれてしまい、一人だけ居残りダッシュを命じられ、さらに帰りが遅くなる。
大急ぎで着替え、ケーキを回収して学校を出る頃には午後11時28分。


ケーキを崩さないよう気をつけながらも帰路を走る大和。
が、悪いことは重なるもので、突然ネコが目の前に飛び出してきたものだから、反射的によけてコケる。


それでもなんとか日が変わる前には八雲さんの部屋へ到着。
八雲さん、コケて泥だらけ(ケガなし)の大和に驚くも、ケーキ&「おめでとうございます」の言葉とともに祝ってもらえるのには自然と笑顔に。


とはいえご飯は当然用意してある。


・具材たっぷりナポリタン
・ローストポーク
・筑前煮
・マカロニサラダ
・いんげんのゴマ和え
・大和用白米


最後の白米にわざわざ大和用とつけているのは、ナポリタンがある以上、さすがに八雲さんは米食わないからだろうな(笑)。


これに大和が買ってきたバースデーケーキが加わるわけですが、箱を開けてみたらコケたせいで少し崩れてる。
そのことに落ち込む大和だけど、八雲さんは手慣れたもの。
お湯であたためた包丁でゆっくりなぞり、修繕してしまう。


大和もホッとし、ケーキにロウソクを立てようと提案するが、ホールとはいえ二人用の小さめなサイズのため、29本も立てると上部がほとんど埋まってしまう。
そこで思いついた大和、ナポリタンにロウソクを立てる(おそらくナポリタンに20本、ケーキに9本)。
そのインパクトある光景に八雲さんは爆笑し、感謝とともにロウソクの火を吹き消す。


その夜、「またあなたの年齢に一つ近づいたよ」と霊前で亡夫に話しかける八雲さん。
だけどナポリタンのインパクトを思い出すと、また爆笑。
そして笑い終えると「こんなに楽しい誕生日、あなたがいた時以来だよ」。


――個人的には八雲さんくらいの年齢の女性が一番好きなんですが、それは置いておいて(笑)。
9年後に亡夫の年齢に追いつくとも言っていたから、旦那さんの享年は38歳か。
本当に若い。死因は事故か病気か。
八雲さんのショックの度合いからすると、ほとんど心の準備をする余裕もなかったように見えるから、やはり事故かなあ。
このあたりはいずれ描かれるかもしれないけど。



★第59膳 あなたのための冬支度


29歳になった八雲さん。
何か新しいことでも始めようかと思いつつ、特に何か思いつくわけでもないため、とりあえず衣替え。
数年新しい服を買っていない自分に軽く自嘲しながら(笑)、目についたのは旦那さんの服をしまった箱。


あまり開ける気がしなかったそれを久しぶりに開いてみると、出てきたのは旦那さんに贈った手編みのセーター第一号。
まだ下手くそで、目数間違えているところがあったり、ほつれまくってたりで、今の八雲さんにとっては半ば黒歴史のため、恥ずかしくて直視できず(笑)。
いろいろとキリがないためとりあえずスーパーへ夕食の買い物へ。


夜、大和が帰宅。
その大和にあらためて八雲さんは尋ねる。
「もう12月だけど学ラン着ないの?」


大和としては特に寒さは感じていないようで、それは彼だけじゃなく野球部の同期も似たようなもの(笑)。
ズボンも夏用のままだったそうで、とりあえず冬用のものを出すと(笑)。
そんな大和に昔から冷え性の八雲さんは驚きと恐怖の目を向ける(笑)。


そんなわけで(?)今日の夕食はもつ鍋。
大和は初めて食べるということだけど、ニンニクもたっぷり入っているし、脂っこくてお気に入り。
ひょいひょいどんどん食べていく大和に対し、八雲さんはもつ鍋あるあるの「いつ飲み込めばいいか迷う状態」に軽く陥る(笑)。


そんな勢いで食べているので、もつは早々になくなってしまう。
しかしこれあるを予想というより確信していた八雲さん、ウインナーと冷凍餃子も用意済み(笑)。
ニンニク味のスープが染み込んだ水餃子に大和も納得。


シメは麺。
ただし大和は麺をオカズにまだまだ米を食う(笑)(八雲さんはここでリタイア)。


これでシメのつもりだった八雲さんだけどスープはまだ少し残っている。
「お米ってまだ残ってますか?」という大和に「このためにわざとスープを残した?」という疑惑を持ちつつ、運良く残っていた米を鍋に投入。
「米と麺と肉とニンニクが食えるって(もつ鍋って)すげー食い物っすね!」とスープの染み入ったご飯をかっくらう大和に、八雲さんは苦笑未満の微妙な笑みを返す以外にない(笑)。


身体があったまった二人。
大和はそのまま帰宅し、八雲さんは風呂へ。
そして風呂上がりにあらためて手編みのセーターを見てみる。
と、思いつく八雲さん。
毛糸と編み棒と編み物の本を取り出し、大和のためにマフラーを編み始める。
「つけたくないって言われたら私がつければいいよね」


――今回は特に何もない日常の一コマ。
だけどやっぱりちょっとずつ変化は起こってきてるかな。
このマフラーは後にまた出てきます(笑)。



★第60膳 なんでもない日のツーショット


大和の父からお歳暮に豪華なハムのセットが送られてくる。
さっそく今夜のおかずにする八雲さん。


その夜、八雲さんの部屋のドアを開けた大和(学ラン姿(笑))を襲うフラッシュの光。
八雲さんの不意打ち撮影ですが、カメラが今どき珍しいポラロイド。
もちろん八雲さんが趣味で持っているわけではなく、以前、さくらの運動会へ両親の代わりに参加してくれた彼女へ、カメラマンの大和父からの贈りもの。


言ってみれば中古だし、それもあって八雲さんも心理的なハードルが下がってもらったんだろうけど、門前の小僧でカメラに関し多少の知識がある大和。
「あれって見たことあるけど、ヴィンテージですげー高いやつじゃなかったっけ…」
しかし「でも黙っとこ」という分別がつくようになるあたり、さすがに八雲さんの性格もわかってきたらしい(笑)。


お返しのため大和に家族の好みを尋ねる八雲さんが夕食に用意したのは、予告通り(?)ハムを使ったもの。


・厚切りチーズハムカツ
・キャベツの千切り
・サラダ
・たこの酢の物
・みそ汁
・白米


らしいんですが、今回は珍しくハムカツ以外はメニューを文字書きはしておらず、描いてあるものから類推しました。


「いただきます」でガッツリ食い始める大和に「食べてるところを撮らせてほしい」という八雲さん。
だけど「昔から写真を撮られるのは苦手」と断る大和。
子供の頃から緊張して怒った顔になってしまうのが嫌らしい。


「野球雑誌にはたくさん撮られてるじゃん」と食い下がる八雲さんに「あれは仕事みたいなもんす」と、あくまで拒絶の姿勢の大和。
八雲さんのお願いをこれだけ断るのは珍しく、本当に苦手なんだろうなあ(笑)。


しかしそんな大和に八雲さんは少し(半分わざと)拗ねて、さすがにちょっとあわてる大和に、八雲さんもあわてて冗談だとフォローする。


食べ終わった大和をベランダに誘う八雲さん。
そこにはサナギになったアオムシが(第七巻「柚子の木と可愛いお客」参照)。
これの経過写真でも撮っていこうかとポラロイドのシャッターを押す八雲さん。
「でも春まで動かないですよサナギ」と言う大和に八雲さんは「いーの。春になったらいなくなっちゃうんだもんね」。
それを聞いた大和は「…そっすね」。


その後、部屋に戻ってリンゴを食べる大和。
と、少し離れた場所からシャッター音が。
あからさまにカメラを向けられていたわけではないが、何かを察した大和。
「…今撮りました?」


そんな大和に不敵に笑う八雲さん。
「大和クンを撮ったわけじゃなくて自撮りだから」
珍しくちょっとしつこい八雲さんの意図が見えなくて軽く困惑する大和に八雲さん、「だってねえ、将来のプロ野球選手と一緒に写真撮りたいじゃない」。


べつにミーハーで言ってるわけではない、なにがしかの八雲さんの想いを感じ取った(らしい)大和。
「じゃあせっかくなのでちゃんと撮りませんか」
八雲さん大喜びで、二人並んで自撮り(密着していて大和はいつも以上に緊張)。
いい写真を手に入れられたので、「じゃあさっきの盗撮あげる」と大和に差し出す八雲さん(笑)。


大和帰宅後、今日撮った写真を見ながら「新しいアルバム買おうかな」という八雲さん。
帰宅後、寝転がりながら八雲さんとツーショットの盗撮風写真を見る大和。
壁一枚をへだてたアパートで二人の夜は更ける。


――親密度が高くなって互いにどこかしら甘えたり拗ねたりできるようになってきた二人(主に八雲さん)。
だけど「春になったらいなくなる」という八雲さんの何気ない一言に、少し意味深な反応をする大和。
伏線っぽくもありますが、でも実は、大和が春になったらいなくなる可能性はずいぶん高いんですよねえ。



★第61膳 暗くなるのが早いから


テレビでダイエット番組を観ている八雲さん(せんべいをバリバリ食いながら(笑))。
その内容がアラサーを題材にしていることもあり、自らの腹肉をつまんで危機感を募らせる。


その夕方、ジャージ姿で部屋から出てきた八雲さんでしたが、アパート前で素振りをしている大和に見つかり、少しバツが悪そうに笑う。
ダイエットのために走ろうとしていると聞いた大和は「ついにか」と少し驚きますが、以前に八雲さんが「ジョギングはまず外を走れるくらいにやせてから」と言っていたのを思い出し(第三巻「リミット・ブレイク!!」参照)、やや不思議そうに質しますが、八雲さん曰く「冬は厚着なので大丈夫なんです」とのこと(笑)。


その答えにもイマイチ理解が及ばない大和だが、走り出す八雲さんを見送ると、途端に違う心配が湧いてくる。
「もう暗くなるの早いけど大丈夫かな…」


走り始めた八雲さんですが、すぐに自らの体力のなさを実感し、効果を得るには継続しなければならないという鉄則の前、早くも挫折を覚え始めます。


と、それとは別に目に入ってきたのは「痴漢に注意」という看板。
不意に不安を感じもしますが、それを煽るのは誰かにつけられているような感覚。
実際に人影が後ろにいるし、自分が立ち止まるとあっちも立ち止まるという恐怖にダッシュで逃げようとするが、すぐに追いつかれ、つかまってしまう。
「ひっ」


だけどそれは案の定大和で(笑)、八雲さんが心配になって追ってきたとのこと。
ボディガード兼アドバイザー付きのジョギングに八雲さんも安心して、大和の助言に従ってゆっくり走りますが、そんな八雲さんに大和はもう一つ疑問を投げつける。
「八雲さんダイエットって…なんでそんなに痩せたいんですか?」


朴念仁全開の大和には女心の機微がわかるはずもなく、クラスの女子(ルイ)はモテたいからと言っていたと告げると、八雲さんは即座にあわてて否定。
「そんなことは全然ないよ! 女性は何歳になってもあるてーどっ、キレーにしてるなって思われたいものなのよ」


その返答にも不得要領な大和だが、「大和クンにも毎日会うしね」という八雲さんの冗談には少し反応しつつも、それ以上にはならず。
そのままジョギング(大和はトレーニング)が続く。


と、そこに大和の先輩で、部を引退した三年生の前キャプテン・須藤さん(ロードワーク中)が通りかかる。
少しあわてた八雲さんにもそつなく挨拶すると、彼女に聞こえないよう大和に尋ねる。
「あの人が噂のママ活の相手か?」


いささか際どい話題だけど、大和にはまったく通じずポカンとするのみ。
そんな大和に笑いつつ、ロードを続けて去ってゆく須藤さん。


一緒にいるところを見られたのはまずかったかと謝る八雲さんだけど「あの人は大丈夫だと思います」と大和は気にしない。
二人はそのまま今夜のおかずを仕入れるためスーパーへ。


この日のメインは鶏ササミカツ(梅しそ・チーズ入り)。
その他にもサラダや副菜、ご飯、みそ汁。
ジョギング後のためシャワーを浴びて寝巻き姿(Tシャツ・スウェット・カーディガン)の八雲さんだが、大和は動じず(笑)。


と、そこへ須藤さんからラインが入る。
「いっぱいいるから大丈夫だぞ」の通知の後、ズラっと並べてきたのはノムラ、オチアイ、ハラ、ヨダ…と、元&現プロ野球選手たちの名前。
その共通点に気づく大和は一瞬微妙な反応を見せ、それをいぶかしく思った八雲さんに質されるも「なんでもないっす。いただきます」と、ごまかしながら食べ始める…


――今回のオチは、プロ野球の事情に詳しくない人にはわかりにくいものだったかもしれないな。
須藤さんが送ってきた選手たちは、全員「姉さん女房」なのです(笑)。
須藤さんは作中随一のイケメンかもしれない(笑)。



後編はこちら!http://suntu500.blog.jp/archives/1077247858.html


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